http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1001120007/

市民の気持ちと、選考者の気持ちが乖離してしまった場合、どうするのが一番良いのでしょうか?

神奈川新聞のサイト「カナロコ」が2010年1月12日付で伝えるところによると、神奈川県南足柄市らでデザインを公募した「金太郎」をモチーフにした観光PRキャラクターの最終選考が波紋を呼んでいるそうです。以下、記事より引用すると、
南足柄市などがデザインを公募した「足柄山の金太郎」をモチーフにした観光PRキャラクターに寄せられた戦隊ヒーロー風の作品「キンタローマン」。子どもから圧倒的な人気を集め、市民投票では126票を得て断トツの1位。だが、デザインが奇抜過ぎたのか、最終審査では、投票12位(13票)の作品に最優秀の座を奪われ、2番手の優秀賞に泣いた。「まさかの大逆転」と市民や市議からは疑問や驚きの声が上がっている。
との事です。それぞれどんなキャラクターかは、最終審査結果発表のページを見ていただくとして、最優秀賞になったのは「万人受け」しそうなデザイン。惜しくも優秀賞になったのは「斬新」で「好みがハッキリする」デザインです。

ネット上ではこの審査結果を疑問視する声多数出ていますが、論点をハッキリさせる為に、少し情報を整理したいと思います。

まず、このデザインを募集したのは、南足柄市と南足柄市観光協会、特定非営利活動法人金太郎プロジェクト推進委員会です。審査は一次審査の後、市民による人気投票、その結果を踏まえ、審査委員会において最終審査を行い最優秀賞1点・優秀賞2点を決定する方式です。

実は、調べてみると、一次審査の段階で当初の予定とは違う方向に話が進んでいたのが分かります。一次審査入賞作品は当初「10点程度を予定」としていたようなのですが、ここを見ると、その約5倍の52点もの作品が掲載されているのです。つまり、この時点で、デザインを募集した当初とは違う選考が行われていた事になります。一次審査の様子を見ると、約700点と予想をはるかに超える応募があったと記されています。床一面に並べられた応募作品の量は圧巻です。つまり、あまりにも応募が多く、10点にしぼる事が難しかったのではないかと推測されます。

そして行われた最終審査。その様子を見ると、壁にデザイン画を貼り付け、みなさんで一生懸命選んでいるようです。ただ、この写真はある点において不自然だなと、私は思いました。それは「審査員が男性の、しかも比較的高齢の人間ばかりである」という点です。元記事によると、
最終審査には市長や有識者らが審査員になった
という事で、もしかすると先の写真には写っていないけれども若い人や女性が審査員として参加していたのかもしれませんが、数としては圧倒的に少数派であるように思います。審査においては、
キンタローマンを「斬新」、「若い世代には人気が出るかも」と評価する声もあった。しかし、奇抜さに難色を示す意見や「キャラクターグッズを作りやすい方がいい」との意見が大勢を占め、結果は次点となった。
という事ですが、もし「若い世代」の審査員が実際に参加していたら、どう結果が出ていたでしょうか?

人気投票の結果より審査員会の最終選考結果の方が優先する事は当初から募集のページに告知してあり、何も不思議はありません。ただ、どういう人が審査するのか、という事が一切不明であったのは、広く作品を募集する上では「今一歩」だったように思います。

そしてそのメンバーにある一定の偏りがあった(と思われる)のは、かなり残念です。市役所の関係するイベントという事で、男性・高齢者中心の意思決定が日常化し、市民の感覚を忘れてしまっていたという事はなかったのでしょうか? ちなみに、金太郎プロジェクトの幹部も全員男性のようです。

また、今回の場合、当初「10点程度を予定」していた一次審査入賞作品が52点になっていますが、その変更の理由等は十分告知されていたのでしょうか? さらに、最優秀賞を選んだ理由については、どうだったのでしょうか? 公募の前提を覆したり、投票の結果を否定する以上、きちんと説明する必要があったと思います。一生懸命キャラを考えたり、投票に参加してくれた人たちの事を考えるならどうすべきだったのでしょうか?

ハインリッヒの法則というものがあります。大きな事故の前には、沢山の小さな事故が、その前にはもっと多くのヒヤリ・ハットする事例があるというものです。筆者は今回の件が大きく騒がれるまでに、多くのヒヤリ・ハットする瞬間があったように思います。恐らく、運営に慣れている人たちだったら、例え今回と同様の選考をしても、騒ぎになる事はなかったのではないかと思います。

理想を言えばキリがありませんし、トラブルを恐れて萎縮しても仕方ありません。大切なのは、今回の騒ぎから多くの人が学ぶ事です。南足柄市には、水金太郎くんや市制施行20周年記念事業の一つとして募集した金太郎シンボルマークのように、金太郎をモチーフにしたキャラクターが沢山いるようですが、各キャラクターの今後を見守っていきたいと思います。

そういえば、今回の「金太郎」は名前は公募しないのかな、と。

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Text by 内田 勉