農薬=不健康って本当に正しい考え方?
最近よく聞く「有機栽培」という言葉。でも、「有機栽培=無農薬」ではないことを知っていますか?
日本では、「有機JASマーク」がついた農産物のみが「オーガニック・有機」という言葉を使用することが許されています。しかし、この有機農産物JAS規格には「使用してもいい農薬」があり、全ての有機JASマークがついた農産物が無農薬というわけではないのです。
でも、そもそも、なぜ無農薬であることがそこまで重要視されるのでしょうか。
無農薬が健康で農薬は不健康、有機肥料が健康で化学肥料が不健康という間違った認識が、農薬が不健康というイメージを植え付けてしまっているのです。
農薬は必ず不健康であるという考えを捨てよう。
風評被害に遭う農薬「グリホサート」
実際に日本政府機関に認証され、安全性も認められている成分なのに、不確かな情報が一人歩きしてしまい、有害であるという印象を植え付けられてしまった農薬があります。その一つに、「グリホサート」が挙げられます。
グリホサートは、主に除草剤に利用される成分です。グリホサート系除草剤は一般の薬局やホームセンター等で手軽に手に入れることができます。その上、世界で一番売れている除草剤は、グリホサート系除草剤であり、沢山の人にその効果を認められているのです。
そんなグリホサートですが、内閣府食品安全委員会を始めとする様々な機関によって安全性が認められているにも関わらず、発がん性との因果関係を疑われています。
この根拠のない噂は、もともとIARC(国際がん研究機関)がグリホサートを「グループ2A」という発がん性評価のグループに分類したことがきっかけです。グループ2Aとは簡単に言うと、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」とする評価です。この評価は、実際に食品を摂取した消費者のデータではなく、農業従事者のデータのみを採用していること、詳細がよく確認できない動物実験を行っているということ、IARCという機関自体が、物質に発がん性があるかどうかという根拠の強さを示す機関であり、発がん性の強さやリスクの大きさを示すものではないということから不確かな情報であると言えるでしょう。
一方、内閣府食品安全委員会やFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)は、グリホサートの発がん性を認めていません。
グリホサートは食品安全委員会も認める安全な成分。
農薬の一日許容摂取量(ADI)は決まっている
グリホサートは、農作物の生産過程で利用され、結果的に農作物に含まれた状態で出荷されることがあります。生産過程で利用された成分が、農作物に含まれるのはグリホサートだけでなく、その他の農薬にも同じことが言えます。この農薬を含む量ですが、「一日許容摂取量」(ADI)として数値化されているのです。
一日許容摂取量とは「人が毎日一生食べ続けても、健康に悪影響が出ないと考えられる量」のことです。1日あたりの摂取量の上限を示しています。一日許容摂取量は、人の体重1kgあたりの物質量(mg/kg 体重/日)で表されます。
グリホサートの場合、具体的にどのくらいの量を食べれば上限に達するのかを考えてみましょう。
グリホサート系除草剤は小麦の生産過程で利用されることがあります。その小麦を使ったパンは1kg当たり0.05mg~0.18mgのグリホサートが混入することがあるとされています。
例えば体重50kgの人が50mgのグリホサートを毎日、一生涯、摂取し続けても、健康に問題がないこということです。検出されたグリホサートの量が最大検出量0.18mg/kgのパンであっても、毎日278kg(約730斤)食べ続けても問題がないことになります。
こんな量のパンを一日に食べる人はまずいないので、パンの摂取により健康に害が及ぶことへの心配は必要ありません。こういった数値を利用した理解があれば、無意味に農薬を毛嫌いすることもなくなりますね。
グリホサートの一日摂取許容量はパンに換算すると、毎日278kg分。
グリホサートは地球にも優しい成分。脱炭素を目指す今の社会におけるグリホサートの必要性
グリホサートが人の健康に直接害を与える成分ではないということが分かりました。しかし、それだけではなく、グリホサートは地球にも優しい成分であるということが証明されています。
「脱炭素」という言葉は、特に2015年にSDGsが開始されてから頻繁に耳に入るようになりました。脱炭素とは、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの人為的な排出を全体としてゼロにすることです。 「全体的にゼロ」というのは、どうしても避けられない温室効果ガスの排出分から、植林や森林管理などによる植物の吸収量を差し引いて、排出合計を実質的にゼロにするということを意味します。
この炭素排出問題に、グリホサートが一役買っていることが、学術的に証明されています。
環境に配慮した栽培方法として、「不耕起栽培」があります。不耕起栽培は、温暖化ガスの発生を防ぐ大変有意義な栽培方法です。どんどん実用化されるべき栽培方法ではありますが、問題として雑草対策が挙げられます。雑草対策として、世界では今、主に2つの方法が利用されています。一つは、グリホサート系の除草剤で雑草を枯らして、作物は遺伝子技術で除草剤の対抗性作物へ転換するものです。このグリホサート系除草剤は、植物の葉や茎から吸収し、植物独自のアミノ酸を合成する代謝経路を阻害して植物を枯らすもので、人や動物に影響が少ないものです。
もう一つは、草の根を残したまま、草刈り機や手鎌で刈り取る方法です。これは大変な時間と労力をかける方法です。脱炭素にできる限り簡単な方法で近づくために、グリホサート系除草剤が必要であることは言うまでもないでしょう。
グリホサート系除草剤を利用して脱炭素を目指す。
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