ポイント
- 太陽系外惑星を構成する固体物質は、これまで不明
- 高温用蒸発しているエイリアンの惑星が付いている「汚れ尾」に注目
- 複数の宇宙望遠鏡を利用して、ほこり尾 “色”を観測することにより、惑星の組成が推定できることを実証
要約
東京工業大学物理ウォン地球惑星科学のオクタあやか大学院生(博士課程2年)、奥住聡准教授小野マッサ研究者、平野照幸助手は発射が計画されている宇宙望遠鏡JWST[用語1]とSPICA[用語2]を用いることで、恒星の周りを回る固体惑星の材料を探索することが可能になることを明らかにした。
「解体惑星」という高温で蒸発しているエイリアンの惑星は、彗星のような汚れ尾[用語3]を抱えていることが知られている。 研究チームは、様々な固体物質からなる解体惑星を想定して、その惑星のほこり尾を通過する赤外線スペクトル(可視光の「色」に相当)を理論的に計算した。 その結果、そのスペクトルをJWSTとSPICAを利用して、観察することによって太陽系から300光年以内の距離にある解体惑星の構成物質を特定することができることが分かった。 本研究が提案する観測によって、主に岩石と金属からなる地球のような惑星が宇宙でどの程度普遍的なタイプの惑星かが将来明らかになると期待される。
本研究成果は、10月6日(現地時間)発行された米国科学専門誌「天体物理学ジャーナル (アストロフィジカル・ジャーナル)」に掲載された。
背景・研究の経緯
太陽系外惑星(系外惑星)がどのような物質で構成されているかどうかを明らかにすることは、惑星の性質と起源を理解するために重要である。 系外惑星の組成は、太陽系の惑星と大きく異なる可能性も炭素と炭化の固体からなる「炭素の惑星」も理論的に存在することができる。従来のシステム外惑星の半径と質量の観測では、惑星の成分を明らかにしようとする試みが行われてきたが、この方法は、惑星の組成の候補を1つに制限することができないという問題があった。
これに対して研究チームは、固体を主成分とするシステム外惑星の組成の解明の鍵を握っている天体で、「解体惑星」という星のごく近くを回る惑星に注目した。解体惑星は非常に高温であるため、その固体表面が蒸発していると考えられる。これまでの天文観測によって解体惑星彗星のような汚れ尾を伴うことが知られているが(図1)がダスト粒子は、蒸発された固体の蒸気が宇宙空間で冷え固まっ形成されたものであると解釈されてている。したがって、ほこり尾組成観測からわかることができれば、汚れ尾排出源である解体惑星がどのような固体物質で構成されるかを知ることができる。
研究結果
研究チームは、2つの次世代宇宙望遠鏡JWSTとSPICAを用いた将来の観測によって解体惑星のほこり尾組成の変更方法を提案した。 固体粒子は、その組成に応じて異なる波長の光(電磁波)[用語4]他の割合が、吸収する。 したがって、図1に示すように、ダストの尾から透けて見える星の光を様々な波長で観測すると、ほこり尾を形成する固体粒子の組成に応じて波長の光を強く吸収する他の波長はほとんどが透過することが起こる。 光が透過する割合を波長別に示したものを「透過スペクトル」と呼ぶ。例えば、可視光線の透過スペクトルは、人間の目で見たときの、その汚れ尾の色を示す。一方、JWSTとSPICAは汚れ成分をより簡単に識別赤外線透過スペクトルを測定することができる。本研究チームは、地球のように、「内部が金属核岩石マントルに分け惑星「金属核がない代わりに、大量の鉄が岩石に含まれている「核のない惑星 “、”炭素惑星 “の3種類の解体惑星を仮定して、各タイプの惑星がどのミネラル成分の汚れ尾を作るかを予想し、その汚れ尾赤外線の透過スペクトルを理論的に計算した。 その結果、候補鉱物ごとに透過スペクトルの違いは、JWSTとSPICAの観測波長に大きく表示されることが分かった(図2)。
例えば、地球のマントルのようにマグネシウムが豊富なミネラルと「核のない惑星 “ほこり尾候補鉱物である鉄の豊富な鉱物は、SPICAの観測波長帯で大きく異なるスペクトルを示す。一方、「炭素惑星”ほこり尾候補鉱物である炭化ケイ素はSPICAの観測波長帯では特定できないが、JWSTの観測波長帯で特定の波長の赤外線を吸収するので、特定のことが可能である。 このように、JWSTとSPICAの観測を組み合わせることにより、ほこり尾ミネラル成分の候補を体系的に狭めていくことが可能であることを示した。
また、鉱物の特定が実現できるように観測条件を調べるためJWSTとSPICAそれぞれの望遠鏡に搭載予定の中間赤外線観測装置の性能に応じて観測シミュレーションを実施した。 その結果、地球から約300光年以内の距離にあり、一般的なサイズのホコリ尾の解体惑星にある場合は、十分な観測精度で汚れ尾のミネラル成分を識別することができることがわかるした。
今後の展開
現在の惑星の探索を進め、宇宙望遠鏡TESSと2026年打ち上げ予定のPLATO[用語5]によって太陽系から300光年以内の距離にある解体惑星が新たに発見されると、本研究で提案された観測を適用する格好の対象となる。 日本とヨーロッパが主導するSPICAを含む宇宙の未来の赤外線観測によって解体惑星本体の構成を知ることはまだ明らかではない外国人の惑星の組成についての我々の理解は大きく前進する。 特に惑星に含まれる鉱物の種類は、その惑星がどこ・どのように形成されたかを反映していると考えられており、ほこり尾の観察によって解体惑星の形成過程に迫ることができことが期待される。
用語説明
[用語1] JWST(ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡) :NASAが開発した赤外線宇宙望遠鏡。 2021年10月に発売予定です。
[用語2] SPICA(宇宙と天体物理学のための宇宙赤外線望遠鏡) 日本(JAXA)と欧州(ESA)が中心となって開発を進めている赤外線宇宙望遠鏡。 2030年前後の打ち上げを目指している。 JWSTより長い波長の赤外線を観測することができることを特徴とする。
[用語3] ほこり尾 :彗星が太陽に近づいたとき彗星の進行方向と逆方向に延びる筋状のもの。
[用語4] 光(電磁波) :光や電波などが電磁波に含まれる。 光は人間の目に見える可視光線だけでなく、目で見ることができない赤外線、紫外線やX線を含んでいる。 可視光線の中で波長が最も短いのが青い光に長いのが赤い光であり、JWSTとSPICAが観測赤外線は赤色光よりも波長が長い電磁波に属する。
[用語5] プラトン :PLAnetary Transits and Oscillation of starsの略。 欧州宇宙機関によって計画されている宇宙望遠鏡。 地球サイズの太陽系外惑星を探索する。
論文情報
掲載誌: |
天体物理学ジャーナル |
論文タイトル: |
JWSTとSPICAの結合された透過スペクトルを使用して分解するエイリアンの惑星のバルク構成の制限 |
著者: |
Ayaka Okuya、Satoshi Okuzumi、Kazumasa Ohno、and Teruyuki Hirano |
DOI: |
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