分散制御システムの進化的設計を実現する数学的原理を発見し、最先端の制御理論でエネルギーインフラのスマート化に貢献| ハイテクニュース| 東京工業大学

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ポイント

  • 複数の開発者が同時に制御アルゴリズムの組み込み、および更新を行うことができる数学的原理を発見
  • エネルギーインフラなどの大規模なシステムの分散制御システムの進化的設計を実現
  • 機械学習アルゴリズムを統合して、高性能制御アルゴリズムを学習可能

要約

東京工業大学工学院システム制御系の石崎隆之教授と井村順一教授はスウェーデン王立工科大学の笹原帆平研究者、慶應義塾大学の井上正樹専任講師、群馬の川口高弘調教との共同研究で、多数の自律分散的な主体(設計・開発・管理者)が、システム全体の不安定化を危機なく制御アルゴリズム[用語1]内装やアップデートを繰り返していくための数学的原理を発見した。

エネルギーインフラなどの大規模なシステムの設計開発、システム全体の機能と構成を事前に計画滝開発[用語2]現実ではない。特に最近では、社会情勢などの環境の変化に応じて柔軟かつ迅速な技術開発のための小さな単位での設計と実装のサイクルを繰り返しアジャイル開発[用語3]の重要性が増加している。

アジャイル開発は、ソフトウェア工学で数多くの実績があります。 しかし、制御工学では、モジュール単位に分割して制御アルゴリズムの設計開発を行う容易ではない。 その理由は、制御工学では主に時間の微分方程式によって物理法則が適用されるシステム(動的システム)を対象とするものである。

一般的に、動的システムの挙動は、現在だけでなく、過去の制御動作に影響を受けるため、万が一、それぞれのモジュール(サブシステム)についても動作する制御アルゴリズムを設計したとしても、その動的な相互干渉を適切に考慮し場合、システム全体は、容易に不安定してしまう。 例えば、電力システムの不安定化は、大規模な停電に直結するため、制御アルゴリズムの調整には細心の注意を払う必要があった。

これらの不安定性を危機なく、複数の主体が自律分散的に制御アルゴリズムを内蔵して更新できるようにした。 同時に、システム全体の安定を維持するために不可欠な制御の原理を数学的に特徴づけることにも成功した。

本研究成果は、2020年11月3日(現地時間)、米国電気電子学会誌 “自動制御のためのIEEEトランザクション「オンライン速報版で公開された。

研究の背景と経緯

モジュラー設計[用語4]ソフトウェア工学では古くからおなじみの概念である。 システム全体を機能別にモジュール化して、複数の開発者が同時に分業することで、巨大なソフトウェアを効率的に構築することができるようになる。 また、システムの機能を部分的に調整する場合には、モジュール単位での更新を行うことができますので、システムの拡張性を高めるためにも寄与する。

特に最近では、社会情勢などが急変する中で、環境の変化に応じて柔軟かつ迅速な技術開発のために、小さな単位での設計と実装のサイクルを繰り返していくアジャイル開発の重要性が増している。 アジャイル開発は、環境の変化に適応する進化的設計を目指しており、システム全体の機能と構成を計画的に設計滝の開発とよく比較されてきた。

アジャイル開発は、ソフトウェア工学で数多くの実績があります。 一方、制御工学で同じ開発方法を適用することは容易なことではなかった。 その理由は、制御工学では主に時間の微分方程式によって物理法則が適用されるシステム(動的システム)を対象とするものである。 一般的に、動的システムの挙動は、現在だけでなく、過去の制御動作にも影響を受ける。 そのため、もしそれぞれのモジュール(サブシステム)についても動作する制御アルゴリズムを設計したとしても、そのダイナミックな相互干渉を適切に考慮しなければ、システム全体は、容易に不安定してしまう。

実際に、図1に示されている電力系統モデル(IEEE68バスモデル[用語5])に複数の開発者が同時並行的に制御アルゴリズムの設計と実装した場合のシミュレーションを見た。 このシミュレーションでは、1台の発電機について、1人の制御アルゴリズムの開発者が指定されており、各開発者は、自分が担当する発電機の数学的モデルだけの制御アルゴリズムの設計に利用できることを想定している。

つまり、各発電機モジュールであり、各開発者による制御アルゴリズムの設計は、モジュール単位での更新に対応している。また、制御アルゴリズムの設計は、制御工学の標準的な線形2次レギュレータ[用語6]による最適制御技術を使用した。

図1 IEEE68バスモデル。 16台の発電機(丸)、35個の電力消費量の要素(矢印)、68箇所のバス(棒表示)で構成されている。 1台の発電機に1人の制御アルゴリズムの開発者が割り当てられている状況を想定している。

シミュレーションの結果は、以下の通りである。 図2は、各開発者によって設計された制御アルゴリズムの発電機(モジュール)単位で制御性能を評価し、制御しなければ(黒棒)と比較して制御を行う場合(青棒)の性能を向上させることができるということがわかる。

また、より強力な制御を行う場合(赤いバー)には、少なくとも発電機ユニットはまた、制御性能を向上させることができる。 しかし、このような制御アルゴリズムを電力系統モデルに実装する安定性が改善されるどころか、システム全体が不安定になる場合、図3に知ることができる。 この結果から分かるように、動的システムの自律分散的に制御アルゴリズムを内蔵して更新することができのは容易ではない。

図2の発電機ユニットで設計された制御アルゴリズムの性能。 棒グラフは、発電機の内部状態の妨害のために周波数変動の大きさを表し、値が小さいほど制御性能が高いことを示す。 許容可能な制御入力の大きさを変えることで、制御アルゴリズムの性能を青と赤の2段階に設定した。

図2 発電機ユニットで設計された制御アルゴリズムの性能。 棒グラフは、発電機の内部状態の妨害のために周波数変動の大きさを表し、値が小さいほど制御性能が高いことを示す。 許容可能な制御入力の大きさを変えることで、制御アルゴリズムの性能を青と赤の2段階に設定した。

図3 相互干渉を考慮せずに局所最適制御を適用した場合の発電機の周波数の時間変化。 電力系統に妨害にバス1に地絡(ちらく)[用語7]をもたらしている。 制御しない場合(左)には、周波数変動の大きなピークが発生しているが、時間が経過すると、周波数の変動は0に漸近する。 制御を行った場合(中間画像の右側の図)は、地絡直後の周波数変動のピークが小さくなっているが、時間が経過すると、周波数が発散している。

研究結果

本研究では、多数の自律分散的な主体が上記のようなシステム全体の不安定を懸念することなく、制御アルゴリズムの組み込みと更新を繰り返していくための数学的原理を発見した。具体的には、石崎准教授を中心に2014年頃から研究が進められてきたオープン制御[用語8]というプラグイン形の分散制御手法は、複数の主体が自由な意思決定の下でモジュール単位の制御を行う場合、システム全体が不安定ないための唯一の方法であることを数学的証明することに成功しました。 本研究を通じて、エネルギーインフラに代表される大規模なシステムを進化的に設計するために不可欠な制御の原理が明らかになったわけだ。

図1の電力系統モデルにオープン制御を適用した場合のシミュレーション結果を図4に示す。 図2で設計された制御アルゴリズムに出力整流器と呼ばれる特別なアルゴリズムを追加してオープン制御アルゴリズムを構成することができる。 図3とは異なり、図4は、発電機(モジュール)単位の制御性能を高めることで、電力系統全体の安定性が適切に改善していることがわかる。

図4 開場制御を適用した場合の発電機の周波数の時間変化。 妨害などは、図3のように設定している。 発電機単位で制御性能を高めることで、電力系統全体を弱体化させず、周波数変動を効果的に削減することができる。

今後の展開

開場制御は機械学習[用語9]アルゴリズムを含むこともできる。 具体的には、モジュール単位でシステムの運用データを収集して、より良い制御アルゴリズムを機械的に学習することができる。 特に収集されたデータの質と量が十分でなかったとしても、システム全体を不安定にすることはできない特徴を持っている。

最近では、エネルギー、ビッグデータという言葉が表示されており、エネルギーインフラにスマートメーターなどを利用して、さまざまなデータを収集することができるようになった。 同時に、これらのデータから意味のある情報を学習し、エネルギー管理に活用することが求められている。 しかし、目的に必要なデータの質と量を事前に予測することはでき、一般的に難しいので、収集したデータに基づいて必要に応じて結果を得ることができない場合があります。 最悪の場合には、システムを不安定になる可能性もある。

開場制御工作機械学習を組み合わせれば、データの信頼性に関係なく、システムを安定的に維持しながら、データを忠実にすることで、より高い制御性能を提供することができる。 今後制御工学の観点から必要不可欠なデータの特徴を明らかにし、エネルギーインフラのスマート化への貢献を目指す。

用語説明

[用語1] 制御アルゴリズム :センサーで測定した制御対象の情報に基づいて、適切な制御動作を決定するアルゴリズム。 例えば、電力系統制御では、周波数偏差と電流、電圧などをセンサーで測定し、発電機から供給される電力を調整する。

[用語2] ウォーターフォール開発 :システム全体の仕様を事前に計画開発方法。 開発スケジュールと予算を把握しやすいことなどが利点であるが、開発途中で仕様変更が困難または製品化までの時間がかかることが不利である。

[用語3] アジャイル開発 :小さな単位に分割して、システムの設計と製品化を繰り返していく開発方法。 状況に応じて柔軟に設計変更が可能なことなどが利点であるが、開発予算推定が難しい点などが短所である。

[用語4] モジュラー設計 :製品設計プロセスを分散するための設計思想。 製品をモジュール化するだけでなく、各モジュールの設計自体を各開発者の決定に基づいて自立分散的に実施する。 Modularity-in-designとも呼ばれる。

[用語5] IEEE68バスモデル :電力工学の分野で標準的に使用される電力系統モデル。 米国のニューイングランドとニューヨークの連携系統を模擬している。

[用語6] リニア2次レギュレータ :線形微分方程式系で記述されている動的システムの最適制御手法の一つ。 システムの内部状態と制御入力の2次関数のコストの合計を最小化する。 発電機モデルは非線形であるため、近似線形化を介して制御アルゴリズムを設計する。 英名はLinear Quadratic Regulator(LQR)。

[用語7] 地絡 :機器と大地との間に大きな電流が流れる現象である。 落雷などによる事故電流を検出して遮断器が作動するまで0.1秒程度が必要であり、その間に周辺の発電機に大きな周波数変動が生じる。

[用語8] 開場制御 :分散制御システムのモジュラー設計方法論の一つ。 本制御方法のアプリケーションを介して風力発電などの再生可能エネルギーの連携系統にプラグイン形の制御技術も開発されている。

[用語9] 機械学習 :大量のデータから特徴的なパターンを見つけるためのアルゴリズムの一つ。 予測と分類などの処理をする。 人工知能(AI)の主要な要素技術となっている。

論文情報

掲載誌:

自動制御のためのIEEEトランザクション

論文タイトル:

動的ネットワークシステムのモジュール化設計:改造制御アプローチ

著者:

Takayuki Ishizaki、Hampei Sasahara、Masaki Inoue、Takahiro Kawaguchi、Jun-ichi Imura

DOI:

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Omori Yoshiaki

ミュージックホリック。フードエバンジェリスト。学生。認定エクスプローラー。受賞歴のあるウェブエキスパート。」

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